エピローグ
「入るよ。」
内海医師は数回、純の部屋をノックし中へと入った。
「せんせい、おはようございます!」
屈託の無い笑顔で純は内海に挨拶をした。
「おはよう純君、今日はね とってもいいニュースがあるんだよ。」
部屋の椅子に腰をかけながら内海医師は言った。
「え?なぁに?いいニュースって」
「実はね、純君のリハビリの経過がかなり順調に進んでて来月には退院できそうなんだよ。」
「ホントに!?じゃあお母さんとお父さんに会えるの?」
「もちろんだよ、もう病院の中で毎日生活することは無いんだ、お家に帰れるってこと。」
「やったぁ〜やったぁ〜うっれしいなぁ〜」
純は心底嬉しいのか、満面の笑顔を浮かべている。
「お家に帰ったら和男君に会いたいと思うかい?」
「え・・?かずおくん?かずおくんって誰?」
純は一体何の話しをしているかわからないといった感じで首を傾げながら内海医師を見つめた。
「いや・・何でもないよ・・じゃあ先生は別の患者さんに会いに行くからそろそろ行くよ。」
「うん!わかったぁ〜ねぇねぇ先生?」
「ん?どうしたんだい?」
「僕ね、先生の事大好きなの、だからねお家に帰れるようになっても先生の所遊びに行ってもいい?」
「もちろんだよ!いつでも遊びにおいで。」
純にピースサインをする内海医師、それを笑顔で返す純・・・・
「じゃあ 先生いくからね…」
内海が部屋を出ようとしたその時…
「すべてはシナリオ通り…・・」
「ん?純君なにか言った?」
「ううん、僕なんにも言ってないよぉ」
「そっか・・それならいいんだけど・・」
純の口から思わず漏れた言葉には内海医師は気付く事無く部屋の扉は閉められた。
閉められた瞬間、純の顔に悪魔の笑みが拡がった…
その悪魔の笑みは「和男」のものではなく純そのものの笑みであった。
純は来月退院する…・・
〜完〜